相続対策は早ければ早いほどいろいろな対策手段の中から最適な方法を選んでいくことが出来るため、より節税効果が高まります。
しかし、相続対策を考えるうえで、「節税対策」ばかりに気を取られていては本末転倒です。
相続にからむさまざまな問題を加味した総合的な観点から、よりよい相続対策をご提案します。
残されるご家族のため、「相続争い」を防ぐことまで考えた対策が重要です。
2.納税資金対策
納税資金の確保を忘れてはなりません。節税対策をしたとしても、それを払う資金がなくては意味がありません。
3.相続税対策
「争続対策」「納税資金対策」を前提に、相続税対策を併せて行うように組み立てることが重要です。税理士法人飯島会計事務所では、相続税申告で培ったノウハウをもとに、現在の財産評価額を算出し、相続税額を試算します。この試算結果をもとに、現状分析をしっかりと行ったうえで、相続税対策をご提案します。
1.法定相続人の確認
自分の死後、誰が、財産を受け継ぐのかを明確にするため、相続人になる予定の人を把握しておきましょう。
2.財産リストの作成
財産には現金、預貯金、不動産、有価証券、貴金属など有形無形、さまざまなものがあります。また、ローンなどのマイナスの財産も含まれます。それぞれをリストアップするだけでも、残された相続人にとって遺産が明確になります。
3.遺産分割方法の検討
自分が誰に何を相続させたいか、検討しましょう。後々、正式に遺言書を作成する際に役立ちます。
4.遺言書の作成
相続人同士のトラブルを避けるために遺言書を作成しましょう。遺言書には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。
5.相続税対策
相続には相続税がかかります。相続税は税の中でも税率が高いので、専門家の指導を受け、残された相続人に有利になるような対策をしておくことが大切です。
1.相続シミュレーションで現状把握
相続税の計算を行うには、まず現状の把握が必要となります。
「自分には課税されるのだろうか?」「いくら課税されるのか?」と心配される方もいらっしゃるようですが、具体的な数字でおおよその税額を知っておくことで、不安の多くは解消するのではないでしょうか。
そして、現状からどのような相続対策が必要なのかどうかを検討してみることです。
2.生前贈与を行う
相続税シミュレーションを行ったうえで効果的と判断できれば、生前贈与の活用を検討すべきです。
生前贈与を実行する際には、その贈与にともなう贈与税の負担を考慮して行う必要があります。また、贈与税には年額110万円という非課税枠がありますが、この非課税枠内の範囲内で毎年贈与を行うことにより財産移転することができます。
なお、たとえ贈与税を支払ったとしても、相続税の負担税率と比較して低い税率であれば贈与税を支払ってでも財産の移転を行っていくことも検討すべきです。
贈与については、贈与契約書等の証拠を残し、必要であれば贈与税の申告納付を行っておかないと後々の相続税の調査時にトラブルとなりやすいですから、慎重に行います。
3.生命保険の活用
生命保険金については、非課税の規定があります。
具体的には、500万円×法定相続人の数が非課税となります。
ただし、相続人以外の者や相続放棄者が取得した死亡保険金については非課税の適用はありませんので注意が必要です。
生命保険金の死亡保険金なら受取人を指定することができ、生命保険金が支払われることで実際に相続が起こったときに納税のための資金の確保ができます。
4.贈与税の配偶者控除
贈与税配偶者控除は、『夫から妻へ』、『妻から夫へ』住宅あるいは住宅を購入するための資金を贈与したときは、2,000万円までは贈与税を非課税とする制度です。また、この贈与の配偶者控除は、暦年控除を併せて利用することができるため、2,110万円まで贈与税はかからないことになります。
贈与税の配偶者控除の特例を利用するためには、次の要件をすべて満たす必要があります。
①.夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと。
②.配偶者から贈与された財産が、自分が住むための居住用不動産であること又は 居住用不動産を取得するための金銭であること
③.贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した国内の居住用不動産 又は贈与を受けた金銭で取得した国内の居住用不動産に、贈与を受けた者が現実 に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること
④.贈与税の申告書を提出すること
(注)配偶者控除は同じ配偶者からの贈与については一生に一度しか適用を受けることができません
5.養子縁組
養子縁組は、その対策効果の「即効性」と「簡便性」から見れば最も優れた対策といえます。
養子縁組により相続税法上法定相続人が増えることにより、以下の節税効果が期待できます。
①.基礎控除額の引下げ
②.超過累進税率の緩和
③.生命保険、退職金の非課税金額の拡大
④.孫との養子縁組により相続税の課税を一回飛ばすことができます
(注)相続税額の2割加算の対象となります
尚、相続税の控除が受けられる養子の数には、制限があります。相続税を計算する際の被相続人の 養子の数を実子がいる場合には1人、実子がいない場合には2人までとするものです。例えば、実子が ある場合に養子が3人いても1人分の相続税の基礎控除しか受けられません。
6.賃貸アパート・マンションの新築
土地の有効活用により、アパート・マンション等の賃貸建物を建築すると相続税の軽減に大きく寄与します。
相続税評価の上で、その敷地の利用区分が更地に(自用地)から貸家建付地に変わり、更地の場合より 20%程度相続税評価額の引下げを図ることができます。宅地などは更地での評価額そのものが高額です から評価減による減額金額も大きく、課税価格の引下げに効果的です。
建物の相続税評価額は固定資産税評価額に相当する金額で評価されます。また、貸家についてはさらに借家権(30%)の割合を控除します。 固定資産税評価額は建物の建築価額の5~6割程度の評価額が目安となりますので、例えば建築価額1億円の賃貸住宅を新築すると、相続税評価額は借家権割合を控除して約4,000万円程度となり、6,000万円程度の評価差額が期待できます。
アパート・マンション建築による相続税の軽減効果はアパート・マンションの建築価格と相続税評価額との開差を活用することにより生じます。そのため、アパート・マンション建築資金について自己資金で賄っても借入金によっても相続税の軽減効果は同じです。
【例】
・5,000万円を借り入れて5,000万円でアパート・マンションを建築した場合
相続税の計算においては、5,000万円の借入金は5,000万円のマイナス財産として評価されますが、 アパート・マンションは約2,000万円程度に評価され、時価ベースでは正味財産の増減はないものの、 相続税評価額ベースでは3,000万円正味財産が減少し、結果として相続税額が軽減されることとなります
・自己資金で行った場合
5,000万円の現預金が減少し、相続税評価額2,000万円のアパート・マンションが増加することになり、 借入金で行った場合と同様に相続税の節税効果が期待できます。
7.最後に
ここまで述べてきた対策はあくまで一例であり、このほかにも不動産を中心とした相続財産の組換えによる評価額圧縮の活用等、さまざまな対策が考えられます。
繰り返しにはなりますが、まずは相続税のシミュレーションを行うことから始めるべきでしょう。